海外渡航を前に、現地での支払いをどうするか検討される方も多いでしょう。
クレジットカードや現金・デビットカード以外にも『プリペイドカード』という方法があるのをご存知ですか?プリペイドカードも、海外利用に対応した種類のものがいくつか発行されているのです。
プリペイドカードの基礎知識や、海外利用時のメリット・おすすめのカードについてわかりやすく解説していきます。
目次
プリペイドカードとは、利用者があらかじめチャージという形で現金を前払いし、その範囲内で決済をすることができるカードのことです。
利用の流れとしては、まずはカードにチャージという形で現金のデータを入れます。ここで仮に¥3,000のチャージをした場合、このプリペイドカードで使える金額は¥3,000までとなります。チャージ残高以上の金額を決済することはできません。カードを提示して決済をするというスタイルがクレジットカードを連想させますが、後払い式のクレジットカードと前払い式のプリペイドカードは大きく仕組みが異なります。
通称プリカと呼ばれ、日本国内で最初に発行されたプリペイドカードは旧電電公社のテレホンカードと言われています。当時はテレホンカードのように使い切りタイプのプリペイドカードが主流でしたが、さらに便利な機能が付帯したものが続々と発行されています。近年の主流となっているクレジットカードのように多くのお店で使うことができる利便性の高いプリペイドカードの特徴を見ていきましょう。
あらかじめ現金をチャージして使う、前払い式です。チャージについては、対応ATMや口座振り込み・利用先のレジで現金を使って行うものだけでなく、クレジットカードと連携させてオートチャージを行うことができるものもあります。
VISAやMastercardといったクレジットカードについている国際ブランドが付いているプリペイドカードが増えてきています。国際ブランドが付いている=その国際ブランドが対応しているお店で使うことができるということになりますので、一気に利用範囲が広がります。また、国際ブランドが付いていることで海外やインターネットショッピングなどでも使うことが可能です。
クレジットカードのように、発行に際して審査がないものが大半です。そのため、クレジットカードよりも手軽に持つことができるでしょう。
クレジットカードの発行条件として『18歳以上(高校生不可)』という年齢の制限が設けられているものが大半であり、高校生や18歳未満の方は持つことができません。
一方でプリペイドカードであれば、年齢に関する制限が設けられていないものも多くあるため、保護者の方が子供に持たせるというケースも多いようです。
テレホンカードや図書カードのように使い切りタイプのものもありますが、近年の主流は繰り返しチャージできるタイプのプリペイドカードです。チャージ機能を利用して繰り返し利用することができます。
このように、近年発行されているプリペイドカードの多くは、従来のものより非常に利便性が高く便利になっています。
使いすぎや不正使用のリスクなどクレジットカードを持つことに抵抗があるという方も、現金とクレジットカードの良いところ取りをしたようなプリペイドカードであれば使ってみようという気持ちになるのではないでしょうか?
国によって使われている通貨が違うということもあり、渡航前には現地での支払い方法についてしっかりと計画を立てておく必要があります。日本円を現地通貨に両チャージ残高以上の被害が出ないトカードを利用するという方が多い中、あえてプリペイドカードを海外で利用するメリットについて考えてみました。
渡航先にもよりますが、国内と比べてスリ・ひったくり・スキミングなどの被害が多い国もあります。外国人旅行客など現地に不慣れな人を狙った犯罪も少なくありません。
盗難・紛失時の被害のリスクが少ないのは、プリペイドカードの強みです。
支払方法 |
被害のリスク |
---|---|
プリペイドカード |
・最大でもチャージ残高までの被害 ・インターネットなどで、自分で利用を停止できるものも有り |
クレジットカード |
・カード会社に連絡をして停止措置をする必要あり ・限度額が高いカードだと、不正使用リスクも大きくなる ・ショッピング利用分に関しては盗難紛失補償の対象となるが時間がかかることも ・キャッシングなど暗証番号が必要な決済についての不正使用は補償対象外となることもある |
デビットカード |
・銀行に連絡をして停止措置をする必要あり ・口座に現金がある限り利用ができてしまう |
現金 |
・補償制度なし。紛失してしまったら発見するまで何もできない。 ・利用停止処理もできないため、泣き寝入りとなるケースも多い |
海外で支払いをする際に重要なのは為替手数料です。プリペイドカード・クレジットカード・デビットカード・現金どの方法で決済したとしても、手数料が発生してきます。
「1850ドル(約20万円)をアメリカでショッピング利用した時に何円必要か」という条件のもと、シミュレーションをして比較してみましょう。
支払方法 |
1850$を支払うのに何円必要か |
備考 |
---|---|---|
通常のプリペイドカード |
208,003円 ※1$=108.16円を適用 Morningstar社の2019年9月13日のレート ※為替手数料4.0%を適用 |
プリペイドカードの為替手数料は“利用金額の4%”前後に設定されているものが多いです。 |
プリペイドカード(外貨チャージができるもの) |
202.096円 ※1$=108.16円を適用 Morningstar社の2019年9月13日のレート ※キャッシュパスポートのチャージ手数料1.0%を適用 |
通常のプリペイドカードではなく、外貨チャージに対応したプリペイドカードにすることで手数料を大きく抑えることができます。 但し、帰国後は外貨チャージを日本円に戻すか、外貨のまま次の渡航まで保管する必要有。 |
クレジットカード(VISA:1.63%の場合) |
203,357円 ※1$=108.16円を適用 Morningstar社の2019年9月13日のレート |
カード会社によって事務手数料が異なりますが、基本的にはVISA・Mastercard共に1.63%・JCBカードの場合は1.60%です。 |
デビットカード |
206,138円 ※1$=108.16円を適用 Morningstar社の2019年9月13日のレート ※ジャパンネット銀行が発行しているVISAデビットカードの手数料3.02%を参照 |
デビットカードでも、クレジットカード同様に海外取引に関わるコスト等として利用した金額に対して手数料が発生します。 |
現金 |
204,887円
※1$=110.75円を適用 成田空港の両替所GPA外貨両替専門店の2019.9.13のレート(為替手数料を含んだレート) |
国内でも現地でも、現金を両替所に持ちこんで違う通貨に両替をしてもらう際には“為替手数料”が発生します。 余ってしまった現金については、再度両替をするか、次の渡航まで保管しておく必要があります。 |
単純に利用分(今回のシミュレーションでいうと1850$)を使った場合で比較すると、外貨チャージのプリペイドカードが最も手数料を抑えられるという結果になりました。しかし、実際にプリペイドカードを使う際には多めにチャージして渡航に持っていく必要があるため、戻ってきた時に日本円に戻すことを考えると最も手数料が安いのはクレジットカードという結果になるでしょう。
次に、帰国後に再両替が必要となる「外貨チャージ対応のプリペイドカードと現金」ではどちらがお得なのかを比較してみましょう。
25万円をアメリカ$に交換し、その後1850$利用して残りを日本円に戻した場合のシミュレーションをしてみました。
支払方法 |
手元に戻るお金 |
備考 |
---|---|---|
外貨チャージ対応のプリペイドカード |
¥46,482 ※1$=108.16円を適用 ※出金手数料などが1,000円・チャージ手数料が1.0%かかっているものとして計算 |
交換手数料や出金手数料などが発生することもありますが、カード発行会社にもよりますがかかっても¥1,000程。 |
現金 |
¥43,064
$→¥ 1$:110.75円 \→$ 1$:105.55円 ※成田空港の両替所GPA外貨両替専門店の2019.9.13のレート(為替手数料を含んだレート) |
|
当初用意したお金は25万円・使った金額は1850$と同じ条件でも、外貨チャージのプリペイドカードと現金ではこんなにも差が生まれます。現金を持っていくのであれば、外貨に対応したプリペイドカードを持っていく方がお得であることがわかりますね。
小学生や中学生であっても、一定期間のホームステイや留学をする子供が増えてきています。そんな時に困るのが、「現地でどのように決済をするか」でしょう。クレジットカードとは違い、プリペイドカードは年齢制限なくもつことができるものもあるため、子供が単独で渡航する際にも重宝することでしょう。
渡航先でプリペイドカードを使おうと思っている方は、以下の2点についてしっかりと確認してから出発するようにしましょう。
プリペイドカードには有効期限がないと思っている方が多いですが、チャージ式のプリペイドカードにもクレジットカード同様に有効期限が設けられているものがあります。
有効期限が切れたカードはもちろん利用することができませんので、渡航前に今一度確認しておくことが推奨されます。
冒頭でも触れたように、プリペイドカードは前払い式です。チャージ残高がなれば利用することはできません。渡航中にいくらくらいお金を使うのかをしっかりと計画建てて、残高不足にならないようにチャージをしておく必要があります。
「海外で使えるプリペイドカード」ということであれば、国際ブランドが付帯したプリペイドカードであれば大半が海外でも問題なく利用することができるでしょう。
ここでは、「海外で使えるプリペイドカード」ではなく「海外でお得に使えるおすすめのプリペイドカード」を4種類紹介していきます。
新生銀行グループのクレジットカード発行会社であるアプラスが発行している海外利用に特化したプリペイドカードです。今回ご紹介する4枚の中で、最もスタンダードな1枚と言えるでしょう。
カード発行会社 |
株式会社アプラス |
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申し込み条件 |
満13歳以上で日本国内在住の方 (未成年者の方は、親権者の同意が必要) |
利用可能箇所 |
ショッピング:国内、海外のVISA加盟店 インターネット上の決済も可
キャッシング:「VISA」「PLUS」マークのあるATM (世界200の国と地域で対応) |
その他 |
有効期限:5年 年会費:無料 為替手数料:利用金額の4.0% チャージ限度額:200万円 インターネット上で利用停止処理が可能 VISAタッチに対応可 |
当該カードを海外で使うには2種類の使い方があります。
1つは日本円をチャージして、利用金額の4.0%の手数料を払う方法です。これは、前述した為替手数料比較での「通常のプリペイドカード」に該当するため、お得度という点では他の支払方法よりも劣ってしまいます。
2つ目は、新生銀行の総合口座「パワーフレックス」と連動させる方法です。これにより3.5%の手数料で外貨でのチャージ・手数料無料で払い戻しができるようになります。
現地通貨でのキャッシングも手数料無料で行うことができるため、現金が必要になっても安心です。
今回ご紹介している4枚の中で、唯一年齢制限なく保有することのできるプリペイドカードです。海外旅行におすすめのプリペイドカードとしては最も有名で、利便性も高いため人気の高い1枚です。
カード発行会社 |
トラベレックスジャパン株式会社 |
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申し込み条件 |
年齢制限なし(マイナンバー確認の必要性あり) |
利用可能箇所 |
ショッピング:国内外のMastercard加盟店 (世界210の国や地域に対応)
キャッシング:国内外のMastercard対応ATM |
その他 |
年会費:無料 為替手数料:利用金額の4.0%~5.5% チャージ限度額:200万円または外貨相当額 最短7営業日で発行 日本国内では使えない スペアカードが無料発行 |
当該カードは、チャージ時に1.0%の手数料がかかるのみで利用時に為替手数料は発生しません。様々な国に渡航するという時は、1.0%の手数料をかけて日本円をチャージして4.0%~5.5%の為替手数料を払う必要があるためお得度は低いです。しかし、キャッシュパスポートに対応した通貨の国1か国にのみ渡航するという場合は、直接その国の通貨としてチャージをすれば良いので手数料は1.0%に抑えることができます。
「米ドル、ユーロ、英ポンド、豪ドル、NZドル、カナダドル、シンガポールドル、香港ドル」の範囲で渡航される場合に非常におすすめの1枚です。
利用に応じて1%のキャッシュバックを受けることができるマネパカードは、注目度の高いプリペイドカードです。手数料だけをみれば、今回ご紹介している4枚のなかで最も安い手数料で利用することができるでしょう。
カード発行会社 |
株式会社マネーパートナーズ |
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申し込み条件 |
満15歳~75歳未満の方 マイナンバー確認あり |
利用可能箇所 |
ショッピング:国内外のMastercard・銀聯加盟店 キャッシング:国内外のMastercard加盟店
|
その他 |
年会費:無料 為替手数料:3%~ チャージ限度額:最大で月に200万円相当額以内 東証一部上場の大企業 利用金額の1%をキャッシュバック |
前述したキャッシュパスポートと比較されることの多いマネパカードですが、両者の違いは以下の通りです。
両者を比較するとマネパカードの方がお得ですが、チャージ可能通貨やスペアカードなどキャッシュパスポートにもメリットがあります。とにかくお得に決済したいという方は、マネパカードが良いのではないでしょうか?
旅行会社として国内でもトップクラスの知名度を誇るJTBが新生銀行のグループ会社アプラスと提携を結び発行しているのが当該マネーティーグローバルです。JTBの強みである手厚いサポート体制は他のプリペイドカードをはるかに上回ります。
カード発行会社 |
アプラス |
---|---|
申し込み条件 |
日本在住の満13歳以上の方 (未成年の方は、親権者の同意が必要) |
利用可能箇所 |
ショッピング:国内外のVISA加盟店
キャッシング:VISAまたはPLUSに対応したATM |
その他 |
年会費:無料 為替手数料:利用金額の5.0% チャージ限度額:上限額は年1,000万円/月200万円まで 申請すれば代理人登録が可能に 利用メールお知らせサービスあり VISAタッチ対応 |
24時間日本語対応のコールセンターを利用することができる・JTB海外トラベルデスクを利用することができるなど、JTBならではの手厚い海外サポートを利用することができるのは大きなメリットです。
また代理人登録申請を行うことで、日本にいる家族が代理でチャージを行うことができます。海外送金では非常に高い手数料が取られてしまいますので、定期的に送金をしたいという場合はこちらの方がお得です。
ここまで、海外でプリペイドカードを利用する際のメリットや特徴について触れてきましたが、最後にデメリットについてもしっかりと頭に入れておきましょう。
プリペイドカードはその性質上、予めチャージした金額以上利用することができません。防犯という観点においては、この性質がメリットとなるのですが、急に大きな買い物をするなど臨時の出費に対応することができないという点においてはデメリットとなってしまいます。
だからといって、過剰に現金をチャージしてしまうと、帰国後の両替や防犯的な面においてプリペイドカードとしてのメリットを失ってしまいます。加減が難しい所ですが、クレジットカードと併用して使うなどしてカバーしていきたいところです。
特に外貨チャージのプリペイドカードに当てはまる事項なのですが、チャージの仕方やタイミングなどが難しいという意見が聞かれます。
一般的な銀行への入金などでも、通帳やキャッシュカードを使うことが主流だった時代から、ダイレクトバンキングとしてインターネット上の操作にて各種手続きが取れる時代になりました。
そのようなインターネット上でのお金のやりとりや、チャージする為替のタイミングの見極めなどに不慣れな方は、外貨チャージのプリペイドカードを使いこなすまでに戸惑ってしまうことが懸念されます。
契約時の約款などにしっかりと目を通しながら、コールセンターなどを活用して上手に利用していきましょう。
海外でプリペイドカードを使う際の最大の注意点は、“どのプリペイドカードを選択するか”という点でしょう。
『プリペイドカード=実はクレジットカードよりもお得』という情報だけを鵜呑みにして海外で利用できるプリペイドカードを作るのではなく、海外でお得に利用したいという目的であれば手数料の低い外貨チャージ対応のプリペイドカードを選ぶようにしてください。
また、クレジットカードによってはポイント還元率が高い・海外利用時はポイント還元率UPといったサービスを行っているものもあります。手数料だけを見て判断するのではなく、ポイント還元率なども加味して本当にお得なのはどの支払方法なのかを見極める必要があるでしょう。
プリペイドカードにも海外で利用できるものがあります。万が一の時のリスクや為替手数料など、他の決済方法と比較してメリットとなる部分が多いためプリペイドカードを持っていくこと自体はおすすめです。
一方で、海外旅行保険が付帯していない・チャージ額以上は利用できないというデメリットもあります。渡航時には、保険や急な出費に備えるという意味でもクレジットカードも一緒に持っていくことが推奨されます。
その際には同じお財布に入れるのではなく、防犯上別の場所にいれて持ち歩くようにしましょう。